真雪さんさんより玲二と真梨香戴きました。
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 「おかえりなさい、棗先生。」
 ドアを開けた先に待っていたのは、相変わらずの薄着と装飾を貫く望月新菜の姿だった。真梨香が出てくると決め付けていたため、予想に反した視線の低さと声の柔らかに一瞬だが激しく戸惑った。
 「君にそういった類いの挨拶をされる覚えはないのだが。」
 華奢な肩の後ろには見慣れた玄関が続くだけで、部屋の主は見当たらなかった。人を呼びつけておいて何をしているんだあいつは、と顔をしかめると同時に下から湧き上がるような忍び笑いが耳に届く。
 「ごめんなさい、真梨香じゃなくて。がっかりしました?」
 案の定巧妙な嫌がらせとしか思えない返答をされ、悪質な夢を見ているような気分に陥る。
 「そういうことを言ってるんじゃない、俺は・・・」
 「真梨香ならキッチンにいますよ。きっと今、世界中で誰よりも先生のことを待っているわ。」
 崩さない笑みの奥に魅入られた真梨香は、この少女を抱いてどんな夢を見るのだろう。あの細い体躯に包まれて、この少女は誰を思い出すのだろう。
 「早く行ったほうがいいのかもしれません。真梨香がうなされて貴方の名前を呼ぶなんて、滅多にないことだもの。」
 そう言って少女が道を開けると同時に、キッチンの方向から何かが倒れるような音がした。まさか、と靴を履いたまま駆け出す。
 「真梨香!」
 見慣れた光景だった。ソファにもたれて荒い呼吸を繰り返す真梨香も、割れたコップと散らばるカプセルも。何度悪夢だと願っても容赦なく刃向かう現実に、覚悟ができていないのはいつも俺の方だった。
 「しっかりしろ真梨香、おい、聞こえるか。」
 「触るなっ…」
 拒絶の言葉はひりひりと痛みに近い波紋を胸に広げ、末期の中毒者のようにその動きに安堵した。暴れるほどの気力も体力もないのか、肩を起こすとぐったりと身体を預けてくる。
 「触らない、で、玲二、」
 「呼びつけたのはどこのどいつだ、たまには病人らしく黙っていろ。」
 激しく咳き込む身体を支え、ソファに寝かせる頃には朦朧とした意識もある程度回復したようだった。散らばったガラスを避け、新しいコップを用意するためキッチンへ向かう。すると、踏み込んだ先で異臭が鼻腔を攻撃した。