真雪さんさんより玲二と真梨香戴きました。


 髪が綺麗だと、思った。炬燵に身体のほとんどを埋める少女の首筋は淡いと言っていいほど細く、襟元には先ほど俺が巻いたばかりの包帯が覗いている。外出が許されない彼女の肌はそれに負けないぐらい白かった。
 「れいじ、蜜柑剥いて。」
 そう少女が振り返るまで、その後姿は完全にひとりの女だった。知っているのに、実の両親よりも抱き締めているのに、この世界中の誰よりも遠かった。
 「いい加減自分でできるようになれ。」
 そう言いながらも起き上がって蜜柑を差し出す表情はいつもの真梨香で、酷く安心したのを自覚するのが年甲斐も無く悔しくて目を合わさずに受け取った。
 「やだ、その白いの嫌い。」
 「だから何度も言っているだろう、柑橘系の食物繊維が含まれているのはこの部分で、お前みたいな痩せぎすは少しでも栄養を取れと…。」
 「うーるーさーい、はやく。」
 またもぞもぞと炬燵の中に戻った黒髪はいつもの光沢で、先ほどの閃光のような色気はなんだったのだろうと考えながら染まる黄色に小さく嫌悪した。
 「ほら、できたぞ。寝転がるのは行儀悪い、ちゃんと起きて食え。」
 「ありがとっ。」
 筋を取り終え最後のひとふさを口に放ると、それまで蜜柑を片手に本に夢中だった真梨香が愛くるしい瞳をきっと睨ませた。
 「もう、なんで食べるの!それ全部まりっ…私のって言ったじゃん!」
 「労働賃ぐらい寄越せ。」
 名前で呼ぶ癖を治せと怒鳴られてから、真梨香は必死に努力している。千切られてしまった一番のお気に入りだったリボンさえ繕えない俺は、拭いきれない痕跡を見過ごすとしかできなかった。
 脛に打たれる幼稚な打撃は炬燵を出してからの定番で、くすぐったさが残るようなそれは次第にリズムを持って緩やかな眠気を誘った。気が付けばいつも先に寝ているのは真梨香の方で、風邪を引くと分かっていてもその寝顔を壊すことはできなかった。子どもの証のような、大人との境目を遠ざけられるようなあどけなさをそのままにしておきたかったことを認めるより早く、思考が眠りに侵食されていく。
 まどろむ視界で手を伸ばし、華奢なその肩に布団を掛ける。見る夢は同じでなくていい。鉛色の現実を忘れられるような、少女の夢として成り立つものなら、それで。