1年後、私はいないかもしれない。 そう告げられた新菜はただそうと呟いた。 「…そうって、いいの、新菜は」 「よくないよ」 変わらない声色 揺れない瞳 感じられない興味 気が付けば 新菜が下にいた 「…どうしたの、真梨香」 「私はいつ死んでも構わない、でも…。新菜、一緒に死んで?」 手を首に絡めて 少しだけ力を入れて 温かいはずなのに冷たいそれは確かに脈打っていて 新菜は驚くこともなく、嫌がることもなく、ただそれを受け入れていた くすり、と新菜は笑い、真っ直ぐ真梨香を見上げる 「ねぇ、真梨香…『いつ死んでも構わない』は『死にたい』とは違うのよ」 一瞬、首を絞めそうになった 震えたまま掴んで離さないその手を新菜は優しく撫でる 「今、死んでもいいの?それとも薄っぺらい覚悟をしてるだけ?」 「にい…、な?」 手が首を掴んでいることなど気にもせず 新菜は微笑みさえ浮かべて、起き上がる いつもと変わらない優しい手が頬を撫でて いつもと変わらないはずなのに、それはとても哀しさに溢れていて 「死を覚悟しているはずなのに――どうしてそんなに怯えているの?」 大きく開かれた目から、何かが零れ落ちた 「――何に怯えているの?」 「分からない、分からない…」 「死ぬのが怖い?」 「分からない。分からないよ、新菜。なんでそんなこと…分からない、のに…そんな。あたしは…」 どうして今泣いているのかさえ分からない なんで、分からない、どうして、分からないんだ 混乱するだけの私を新菜は優しく抱きしめた 「真梨香、私はね、真梨香が死んじゃったら寂しいよ」 「…に、な」 「寂しくて、悲しくて、辛くて、痛いよ」 だからそんなこと言わないで 「私は…」 「2人なら確かに怖くないかもしれない、でも私たちは1つじゃない」 だから、と新菜は微笑んで 「一緒に生きて、真梨香」 瞬間、熱いものが込み上げた どうして視界が歪んでいるんだろう 新菜がどうして滲んでいるんだろう 「どうして泣くの。変な真梨香」 「…はは、そうだね。変なの…」 おかしい こんなに こんなにも ――嬉しいなんて 「新菜も、私と、生きてくれる…?」 「――もちろん」 なんて… なんて、幸せな日なんだろうか これ以上の幸せなんて訪れるはずがない 「…ねぇ、新菜。すごい幸せな気分だよ」 私もだよと聞こえたのは気のせいじゃないよね (天使の与えた枷は) (こんなにも優しく愛おしい) |