夢を、見ていた。瞼を開いて部屋の灯りを受け入れる頃には大方の内容を忘れていて、それでも裸で包まれる毛布のような心地良さは持続していた。 のろのろと身体を起こし、隣を見ると要がタンクトップ姿でいびきをかいていた。清潔を保つ真っ白なそれから伸びる腕は身長のわりにしっかりと鍛えられていて、何気なく触れると硬い弾力で返された。 ずれた眼鏡をそっと外す。眉間に刻まれた皺は眠っている間も休むことなく、試しに人差指で伸ばしてみても鬱陶しげに首を振るだけだった。起きる気配は全く無い。 部屋を見渡すと、三人で寝入ったはずなのにレンの姿が無かった。お酒でも買いに行ったのかな、早く帰ってくるといいな。散らかる思考をそのままにもう一度布団へ潜る。買ってもらった毛布を肩まで掛けて、少し離れたところで横になっている要の背中に呼びかけた。 「要、起きないの。」 呼べばどんな状況でも反応が返ってくる。どれだけ酷い言葉でも返事をしてくれる。 「要。」 そうした『当たり前』は、壊れる。 「要。ねぇ、要ってば。」 激しかったいびきはいつのまにか治まっていて、固く目を閉ざした寝顔に膨大な恐怖心が募った。 「要、起きて。お願い、早く。」 涙腺はいつだって私の意思に反している。何がこんなに怖いのか、よく分からないまま身体だけ大きくなった。 「要・・・。」 どうしてこんなにか細い声しか出ないんだろう。もっと大きな声で呼ばないと、誰も立ち止まってはくれないのに。 もうずっと長い間要と話していない気がした。もう二度と要が目を覚まさない気がした。 ありえない、頭の中で誰かが笑う。ありえないよね、私も五年前そう思ってたよ。 そう思って笑って待ってて、それで私は独りぼっちになったんだよ。要まで、私を独りに、 |