真雪さんさんより要×マナ小説戴きました。
05話の感想SS。



 触れただけで壊れてしまいそうな、なんて使い古された表現しか出てこないほど、この腕の中にあるものは脆かった。八月の終わりには相応しくない天候の中、肌寒いと言ってマナちゃんが身を包んだブランケットはもう彼女の匂いになっていた。
 季節外れの冷気は静かに追憶を凍らせ、頭の天辺から足の指先まで縛りつけたようにそれは「今」を支配する。
 抱き上げると眼鏡が当たって痛いと笑っていた。頬を寄せると長い睫がこめかみをくすぐった。膝に乗って首に腕を回して、苦しいと引き離しても構わずにじゃれついてきた。
 天使が笑顔の奥底に隠す狂気に気づかないように、硝子細工よりも繊細な瞳に傷が付かないようにこの腕で包んできた。
 自分の膝の上で立てられる規則正しい寝息は、五年の月日を経ても穢れを知らず無垢な夢を紡ぎ続けている。
 「マナ。」
 ずっと夢の中に居たらいい。きっと君が望むものが全て揃っていて、涙の原因も醜い欲望も向けられないその世界で、何も知らずに穏やかに暮らしていたらいい。もしそれが脅かされるような不穏な気配が現れても、俺が全部ぶん殴ってやるから。
 眠り姫は王子の夢を見る。下界の狼の嘆きが届かない、深い深い夢を。