ソファに投げられた携帯が震えながら小さな光を放ち続け、着信を報せている。 俺はとっくにそれに気付いていたが出る事が出来なかった。 ディスプレイに表示されている文字は、久し振りに見る名前だ。 ……レンさん。 俺は携帯を見つめたまま、切る事も出る事も出来ず、留守電のボタンを押した。 何も残さずに切られるかと思いきや、何かメッセージが吹き込まれている。 ディスプレイの光が落ちた瞬間、俺はすぐさま携帯を耳に当てて留守電を再生した。 (ピー、と云う電子音はいつ聞いても耳障りだ) 「マナが車に撥ねられて死にかけてる」 留守電に入っていたのはたった一言。それだけだった。 「…は?」 夢で逢えたら 携帯を持ったまま呆然としていると、メールで病院の住所が送られてきた。 一応開いて、文字は読む。 それが文字だってのは解るのだが、内容が全く頭に入らない。 えっと…何? マナ?車?死にかけ?何だっけ、それ。 全ての単語が頭に入ってはするりと逃げていく。 「…!」 理解と平行して指先は氷のように冷たくなり、唇はどんどん乾いていった。 覚束ない足下で車に乗り込み、アクセルを全力で踏み倒しながらメールに書かれていたその場所へ向かう。 「マナが車に撥ねられて死にかけてる」 留守電に残された声が頭の中で何度も反芻され、気を抜くと運転に影響が出そうな程に手が震えていた。 「んだよ、それ…!!」 何とか病院に到着した俺は、急いで駐車場に車を収め、一息吐く間も無くそこから飛び出た。 時計を見ると家を出てからたった数分しか経っていない。(飛ばし過ぎだ) 病院の廊下を全力で走ると、年増の看護師に「走らないで下さい!」と怒鳴られる。 うっせぇ、と心の中で逆ギレする余裕すらない。 「マナが車に撥ねられて死にかけてる」 留守電に残された声がしつこく何度も頭に響く。 そういやレンさんの声を聞くのも、その妹の名前を聞くのも4ヶ月ぶりだ。 ――…そうか、俺が彼女を強姦して4ヶ月経つのか。 「死にかけてる」って事は、死ぬかもしれねえんだ。 マナちゃんが死んでしまったら。 あれが最後になるのかよ。 何だよ、そりゃあ。 |