真雪さんさんより颯太×千鶴小説戴きました。
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 部屋の置時計が零時を知らせると同時に、メールの受信を知らせるランプが光りだす。5分、10分と長針が動いても細かくバイブは震え続けていた。
 自宅の風呂で迎えた17歳の誕生日は物語のように感慨深いわけでもなく、ぱらぱらと届くおめでとうメールをまとめて返信するのはいつにしようか、なんて考えながらタオルで髪の水気を払う。普段ポニーテールにしていると自分の髪がいつの間にか伸びていることに気付かない。地毛の色が浮いていないか念入りにチェックするのはもう習慣だ。
 今では思い出したくも無い体格の小学生時代と中等部、高校生への憧れは激しかった。短くしたスカートも濃い化粧も、誰にも邪魔されずに自分のものにできる。子供がそんなに着飾る必要なんて、と大人たちは嘯くけれど言われて止められるような安易なものじゃない。
 溜息を堪えて携帯を開くと、着信メール12件。受信フォルダに並ぶ見慣れた名前に目を通し、一人目の返信画面に移る。テンプレのような文章を組み立て、送信ボタンを押す直前で着信メロディが鳴り響いた。
 驚いたのは、設定を間違えて放置していた音量の多きさにではない。表示された名前が滅多に電話なんてしてこない颯太だったからだ。声が震えてしまわないよう、大きく息を吐いてから通話に切り替える。
 『あ、もしもし?』
 着信に応えるより先に能天気な声が呼び掛ける。男慣れしていないなんて純粋ぶれるほど経験が浅いわけでもないし、電話が珍しいだけで颯太と話す回数だって違うクラスの男子にしては多い方だ。それなのに不自然に速くなる鼓動は、どんなに意識しないようにしても今日が特別な日だからだろうか。
 『ごめんなー、夜遅くに。もしかして寝てた?』
 「ううん、お風呂上がったとこ。どうしたの、電話なんて珍しいじゃん。」
 掠れる声を咳払いで誤魔化しいつもの軽い口調を取り戻す。
 『あー、もうお風呂入っちゃった?』
 電話の向こうで声色が曇る。陽気な姿しか学校に出さない颯太のこんな声を聞くのは、夏に教室で交わした会話以来だった。
 「なぁに、一緒に入りたかった?」
 言いながら自分の胸に触れる。僅かな膨らみすらも感じられないこの身体では、一緒に入ったところで何も起きない気がする。
 『バカなこと言ってるとプレゼントやんねーぞ。』
 「え?」
 いくら驚いたとはいえひどく幼くなってしまった自分の声にびっくりして口を塞ぐ。電話の向こうで笑いを堪える気配がした。
 『この前もらったじゃん、だからそのお返し。ちゃんと自己申告しとけよな、さっきまで坂口たちと一緒で、初めて聞いたし。早く渡せたらなって思ったからちょっと外出てこれるかって言いたかったんだけど、風呂上りだしよく考えたらこの時間は危ないよな。明日持ってく、遅刻すんなよ?』
 「待って!」
 話が畳まれるのを咄嗟に静止する。半ば無意識に動いた口はそのまま加速した。
 「どこに行けばいい?」
 『危ないからいいって。』
 「いいから、どこ?」
 颯太の言い分を遮りながら箪笥を漁る。ここで余所行きの格好はできないしかといってラフ過ぎるのも、と授業中の五倍の速さで頭を回転させる。
 『井之上の最寄り駅って涙橋だろ、改札出たとこで待ってる。気をつけろよ、ホント。』
 観念したような颯太の声を聞きながらこの前のバーゲンで買ったサロペットと春色のTシャツを引っ張り出す。まだ生乾きの髪を手で流すと、台所の母親に気付かれないようそっと部屋の窓から抜け出した。