「城崎さん、起きて。今日は平日だよ。」 天使にも等しい寝顔を壊してしまうのは忍びないが、まだ教員免許に名前を載せている以上、遅刻を見過ごすわけにはいかない。昨晩自分が剥いた胸元を前にして聖職者を気取ることはできなくても、少しでも授業の遅れを取り戻して欲しかった。華奢な腕がわずかに動き、朝露を吸い込む薔薇よりも繊細な瞳が開かれる。 「あきひと。」 一文字一文字、噛み締めるように呼ぶその名前が、自分のものであることが後ろめたく思う高等な罪悪感が芽生えすらしない朝が呪わしい。薄紅色の花びらを咥えたような唇が綻ぶ。 「昭仁、誕生日だね。」 声にまどろみを残したまま、首に回された両腕の熱を感じる。それを温もりと呼ぶことは、きっと僕には許されない。 「おめでとうって言えて、嬉しい。」 しがみつくように込められていた力は言い終ると同時に一気に抜けていった。再び枕に戻した頭の寝癖すらも、首筋に残る温度を責め立てるようだった。 |