長くなったこの髪は過ごしてきた年月の長さを感じさせた 「あ…」 不意に見つけた一冊の本 ぶ厚い本の間に紛れるように隠されたそれ 最後に見たのは随分昔だったはずなのに、頭の中に蘇る記憶の断片 「まだ、あったんだ…」 そっと取り出して、表紙をそっと撫でる 「何をしている」 「いや、懐かしいなぁと思って」 ほら、と見せれば刻まれる皺 どうしてここにあるのだとか聞いてみたいがそれはそっと噛み締めた 《遠い国のお姫様は〜》 理屈ばかり吐き出すその口から語られる物語はどこかおかしくて 小難しい文句が入るその物語を私は、理解も出来ずに聞いていた 「一々ケチつけながら絵本読むのはあんただけだよ」 現実的に考えると、これは理論上…、地球の重力を考えて、 御伽噺に現実さを求める人も珍しいと思う それなのに目の前の男は絵本さえ夢を持たせてはくれない 「笑って泡になった人魚姫を悲しみもせずに読む奴よりはマシだろう」 そうなのだ これがこの男なりの優しさ 夢を持たせるよりも現実を きっとこの男は私の死期さえ冷静に告げるのだろう そう遠くない未来を思いながら、そっと本を閉じる 「玲二、薬は?」 「ああ、こっちだ…」 本一冊空いていた隙間に滑り込ませると、ぶ厚い本に挟まれたそれはどこか窮屈そうで 背表紙が少し本棚から出るくらいまで引っ張り出せば、表紙の金髪の女の子と目があう 花のように笑う彼女は日の目を浴びて、その金髪は一層輝いた気がした |