「要、これやるよ」 気軽ささえ持ち合わせたその言葉の重さが俺を蝕む 一日の大半を寝てすごした日々 覚醒仕切れていない脳を動かして、瞼を開けさせる 擦れるシーツの音、被せられた布団、真っ白な世界 滲む視界の中、ゆっくりと乾いた唇を動かして、名前を呼ぶ 「…レン」 おかしい いつもならどんなに小さい声で名前を呼んでも来てくれる兄がいない レンがいない。レンがいない。レンが、レンがいなくちゃ… 再び名前を呼ぼうとしたそんな時 優しい手がかけられた布団越しにそっと撫でてくれる まるで安心させるように、大丈夫だと言ってくれるように、 「……レン?」 布団の隙間から見えた黒い紐に通された指輪 あ、レンだ。来てくれたんだ。レンが来てくれた そっと手を伸ばし、指輪を掴みそのまま引っ張る 行かないで、傍にいて、離れないで 「レ、ン」 とろとろと落ちていく瞼 鈍る思考の中で、離れていかないように手の中の指輪を握り締める 傍にいることを教えてくれる温かい手に安心した私は眠りにそっと身を任せた 静かな寝息と、弱い力で握られた指輪 時々布団をかけ直してやり、少しでも安心させるように頭を撫でてやる 「マナを頼むな」 「……何を言って、」 「これからはお前が傍にいてやってくれ」 何を言っているか分からなかった 頼まれる覚えもなかったし、別に俺がいなくてもレンさんがいればいい その方がマナちゃんだって安心するに決まってる レン、レンとうわ言のように呟くマナ そんな彼女を頼む? 「あんたがそれを言うのか――」 そんな言葉に答えるように、指輪がずっしりと重くなった気がした (なぁ、あんたは俺に何をさせたいんだ…?) |