どぅん。さんより、新菜・玲二・真梨香の小説を戴きました。


毎週決まった時間に彼女と待ち合わせをしている。時間通りに行っても彼女はいつも先に来ている。年相応に見えない見た目を使い堂々とタバコを吹かしながら。
しかしその日、彼女はそこに居なかった。
(携帯も通じない・・・携帯の意味がないじゃないか)
何度かけても繋がらない携帯を乱暴に閉め彼女の自宅へ向かった。ここへ来るのも久しぶりだ、彼女と、あいつの住処。
ピンポーン
10秒・・・20秒・・・30秒
自宅にも居ないのかと苛つかせながらもう一度チャイムを鳴らそうとした。
ガチャ
「・・・あら」
「・・・彼女は?」
「出かけてるみたいですよ、先生」
家主の代わりに出て来たのはあいつ、新菜だった。真梨香が居ないのならここへ居る理由が無い、と帰ろうとすると、
「あ!待って先生」
後ろから新菜に呼び止められた。
「上がってって。真梨香ならすぐ戻ってくるわ、きっと」

この部屋に来たのはいつぶりだろう。彼女に染められたこの部屋。しかしそこには必ずあいつの痕跡が残る。
「外、熱いですか?」
「ああ」
「でも先生、汗かいてない」
「体質であまりかかないからな」
「肌も白い」
「それも体質だ」
「まるで夏に嫌われてるみたい」
クスクス。無邪気に笑う彼女に悪気があるわけない。しかし彼女の一言一言に苛つきを隠せない。それは、多分俺だけ。
「どうぞ」
「・・・どうも」
目の前に置かれたカップには真っ黒なコーヒーが入っていた。出されたカップを手に取り口元に持って行く。
「それね」
「?」
「毒入りよ」
「・・・は?」
「一口飲んだら死ぬ毒」
「・・・」
「飲まないの?」
カップを下ろしテーブルに置く。
「遠慮する」
「ふーん」
「・・・」
「躊躇わずに飲んだわよ」

真梨香は。

彼女は誇らしそうに言った。
「・・・お前は」
「なに?」
「お前は真梨香の・・・
「ただいまー」
玄関から彼女の声が響く。
「おかえり」
「誰か来てるの?靴があったけど・・・あ」
「何故来なかった」
「いやあの・・・ゴメン忘れてた」
「はあ・・・薬、ここに置いて行くぞ」
席を立つ。
「玲二ー、怒らないでよー」
「怒ってない」
「怒ってるじゃん」
「こういう口調なんだ」
玄関へ行き靴を履く。ドアノブを回し部屋を出ようとする。
「玲二!」
「・・・?」
「ありがとね」
一週間ぶりに会った彼女の顔は、笑顔だった。
「・・・ああ」

「新菜来てたんだね」
「ええ」
「玲二と話した?」
「ううん。彼、私のこと嫌いみたい」
「えー、そうかな」
「だって私の入れたコーヒー飲まなかったもん」
「ふーん。新菜の入れたコーヒーは美味しいのにね」
「真梨香も飲む?」
「うん、頂戴」
「・・・はい、毒入りコーヒー」
「ふふ。そっか」
躊躇い無く一口飲む。
「・・・美味しい」
そしてフフッと笑う。私もつられて笑う。
「まあ玲二、甘いの嫌いだから」
「そっか。じゃあ飲まなくて正解かも」
毒入り(砂糖入り)コーヒー。