飛び起きてすぐに、優希は自身が涙を流していることに気がついた。なにか非道く滑稽で、哀しい夢を見ていた気がする。内容は覚えていないけれど、喪失感が溢れる。何故だか子供の時のように、暗闇に目を覚ました不安が襲いかかってきた。 隣に眠る瞳子を見て、小さく息を吐いた。 けれど直ぐに、微動だに動かぬ身体に空虚な気配を感じて。 恐る恐る、手を伸ばす。 「ん…」 温かな頬に触れて、小さく身じろぐ声を聞いて、優希はやっと不安から解放された。 けれど眠気は戻らない。馬鹿みたいだとは思う、しかし眠れそうもなかった。 (もし、もしも。僕が寝たその後に、白磁のような肌が『本物の』白磁に変わったら。誰かが彼女を、人で無くしてしまったら。) それならば、いっそのこと、 つつ、 男にしては華奢な、けれど無骨な指が、外の人工灯に白く照らされる瞳子の首を這う。 気道を辿り、掌を交差させる。 ドク、ドクン、 耳の奥に響く鼓動は、瞳子のものか。それとも自分のものか。深と張る冷たい空気に、ただ二人の呼吸音が混じり合い霧散する。窓の外からは、一切の音がしない。車さえも、通らない。 冷たい身体の温もりと、汗ばむ冷たい指。 小さく息を吐いて、優希は祈るように目を瞑る。 そうして、ゆっくりと指を外した。 被せただけの指の痕は、薄っすらとさえ残りはしない。 (証は、僕らを流れる赤黒い血液で十分だ。無機物も有機物も、要らない。) 「そうでしょう、瞳子…」 唇から零れ堕ちた言葉は、放たれたと同時に夜闇に飲まれる。 眠る瞳子の耳にすら夢にすら、届かない。 |