窓から差し込む朝日が、閉じた瞼をも通過してくる。昨日カーテンを閉めずに寝てしまった所為か、と恨みつつ重たい瞼を開いた。時刻は7時。たまの休みなのに、いつもと同じ時刻に目が覚めた。眠っていたい、底知れぬ睡魔に身を委ねていたい。しかし朝日はそれを許してくれないようだ。 起きてみて気づいたが、少し喉が渇いた。とりあえず冷蔵庫に行き水分補給、その後カーテンを閉めて、また眠りにつこう。温もりの残るベットから出ようとしてハッとした。腰に絡み付く重み。耳を澄ませば微かに聞こえる寝息。 「城崎さん、ちょ、放して。」 腰を完全にロックしたマナを揺する。普段どんな事があっても起きない彼女、彼女の安眠を邪魔するのは避けたかったが今はそれどころじゃない。腰に廻った腕が名残惜しいし、このまま彼女を抱きしめてまた眠りに落ちたい。起きる気配のないマナを諦め、腕をなんとか解きベットを抜け出した。 秋も深まり始め足の裏から床の冷たさを感じた。冷蔵庫から取り出した水を喉に、そして胃に流し込む。ふと外を見ると久しぶりの晴天だった。こんなに太陽が出てるのに外気は冷たい儘なのか、なんて考えていたら寝室から音が聞こえた。 シーツをめくる音、ベットから立ち上がる音、床を歩く音。 「おはよう。」 微睡みの残る足取りでキッチンに居た僕を見つけ、マナは少しほっとした顔をした。 「おはよう。」 「ごめんね、起こしちゃった。」 謝りつつ寝室に向かおうとする。しかし彼女は寝室のドアの前から微動だにしない。 「城崎さん?」 俯いた彼女の表情が見えない。笑っているのか、怒っているのか、はたまた泣いているのか。 「どうしたの?具合でも悪いの?」 「先生は、」 突然彼女が口を開いた。 「死ぬんですか?」 「・・・?」 「先生は、死んでしまうんですか?」 「・・・ごめん、話が見えない。」 未だ俯く彼女の肩をつかみ表情を見る。それはまるで、複雑だった。 泣きそうな、でも怒りに満ち、悔しさ悲しさ、不の感情を全て詰め込んだそんな表情。 「なにかあった?」 「・・・夢を見ました・・・。」 絞り出すように呟かれた言葉。 「勝手に死ぬのなんて、許さない。置いていかれるのなんてーーーーー ーーーーもう、嫌。 涙の流れない瞳で彼女は泣いていた。複雑な彼女の気持ちが見えない。もどかしい。 「死なない。置いていった君が泣いてしまうなら、置いていかない。」 「・・・。」 「君より先には死なない。」 悲傷の表情が少し晴れた気がした。 「ホント?」 「ああ。君がそれを望むなら。」 白くて滑らかな首に手をかける。折れてしまいそうな喉。 「君を殺してから、僕も死のう。」 残酷なはずの言葉に彼女は笑みを浮かべた。 「約束、ね。」 安心と満悦の表情、君はその方が良い。大人びた君が差し出した小指に自分の小指を絡ませる。 これは鎖なのだろうか。 お互いの首に巻き付いた鎖。 足並みを揃えなければ道連れになる鎖。 君と僕はそうやって鎖を何重にも巻き付けあう。 お互いが絡まっている事も気づかずに。 |